パン屋を営む料理人、美穂さん

 

2021年9月にオープンし間も無く、伊勢の人々に親しまれるパン屋さんとなったパン屋麦。ところが店主の美穂さんはパン屋をはじめる前は料理人をしていたそうで。



「小さい頃から料理人を目指していて、高校は相可高校に進学しました。卒業後は田舎料理屋さんで働いていましたが、もっと料理の幅を広げたい、西洋料理の道に進みたいと思い 、外宮参道にあるココット山下さんで働かせてもらうようになりました。シェフの隣で料理をしたり、サーブもしたり、ワインも提供したりと、学びの多い環境でしたが、更に勉強をしたい欲が出てきて。そしたら、東京でかっこいいお店を見つけて、そこのシェフの記事も探して読んで、この人の元で働きたい!と思い、まだ面接もしていないのにそのレストランの通勤圏内の部屋を借りました。笑」



優しい朗らかな雰囲気とは裏腹に、かなりガッツのある美穂さん。そこから伊勢にお店を構えるきっかけは、伊勢のレストランで働いていた頃からの展望があったからこそ。



「東京に行く前、ココット山下さんで働いてる時に、ここ外宮参道は、訪れる人と住む人の間のような場所だなと感じていて。近くには市役所があり、銀行も、郵便局もある。生活の中心でありつつ、もちろん外宮もあって、観光地でもある。そんな人々が交わるこの場所でお店がやりたい、と当時から思っていました。」

お店の軒先でのインタビューの様子




伊勢でお店を持つことを志した美穂さんに、転機がやってきました。


「東京で働きながらも、ゆくゆくは伊勢でカジュアルなレストランをしたいと思っていて、物件を探していたら、 コロナ禍になってしまい..。そしたら、山下製パン所がお店を閉めるけど、その跡地でお店をやってくれないかとココット山下のシェフから連絡をもらいました。」「山下製パン所は個人的にも思い入れがあり、なくなってほしくない場所でした。シェフも、このお店を知っている人にこの場所を使ってほしいという思いがあったようで、なら自分がやるしかない!と決断しました。」


山下製パン所の場所でパン屋さんを継ぐことを決めた美穂さん。最初の計画と違う方向に道を決めた、その時の心境は?


「最初はスープ屋さんをしようと考えていました。でも山下製パン所の場所が空っぽになるのが嫌だったのと、パンを製造する機械も譲ってもらったので、よし!パン屋をやろう!と決めました。」「パン屋は重労働と言われることが多いんですが、スタッフも健康的に長く続けられる環境作りをしたいと思い、広島のドリアンさんのような、種類を絞ってパンを焼くことを決めました。」

いつも食卓にのぼるパンをという思いで焼かれているパンたち





方向転換後も強い気持ちで突き進む美穂さんは、美穂さんのパン屋さん像があるようで。


「私はパン職人ではなくパン屋さん。職人は極めた人のことだと思っていて、自分はそこまで到達していないし、そこまでいけないと思っています。なので私はパン屋さんの人。でも美味しく焼ける人でありたいです。」





そんな美穂さん営む「パン屋 麦」の名前の由来は?

「最初は食パンを意味するパンドミという名前にしようとしていました。この名前は最終候補だったんですけど、同じ名前のパン屋さんがあったので却下になって。笑 改めて考え直した時に思いついたのが【麦】。麦の穂は、成長過程で、麦踏みと呼ばれる作業があり、それによりしっかり土に根を張らせ、まっすぐ伸びる丈夫な麦に育てることができます。 この成長過程をとり、困難があっても、強く真っ直ぐ育つようにと願いを込め【麦】と名づけました。あと、親しみが持てる名前にもしたかったので、ぴったりだなと。」

麦の穂を全て一筆書きで。「つながる」をイメージして作られたパン屋麦のロゴ。

強い思いで動き続ける美穂さんの今後の展望は?


「この街の地域活性化のひとつになるような活動をしていきたいです。まず旅行者にとってはまた来たいと思える街に。そして今後は住みたいと思う街づくりをしたいですね。ここは住んでる人と訪れる人が交わる街だと思います。どっちかが特化することなく、ボーダーのない、伊勢の文化も味わえて、新しい取り組みもできる街。考えているとワクワクします。」

インタビュー中笑顔が絶えない美穂さん



話を聞いているとずっと動き続けていそうな美穂さんですが、休日はあるのでしょうか?



「麦は火水定休にしていて、私は火曜はお休みで、水曜は仕込みをしています。お休みの日は家にいることはないですね。外に出ないと休みを楽しめないと思う人間なので。コーヒーは絶対に飲みに外に出ますし、美味しいものも食べるようにしています。伊勢でご飯だと柿右衛門さんだったり、osseさん。コーヒーだとFOLK FOLK、trail coffee、proud coffeeに行きますね。また、美味しいものを食べる、飲むだけじゃなく、好きなお店で好きな人に会うのも目的だったりします。」



「休みと仕事をキッパリ分けているというより、自分は生活と仕事がいっしょなんです。仕事の中に生活があります。なので仕込みが終わったら出かけることもあります。1日休みの日はあまり予定を前もって決めずに、思うがままにフラッとどっかに立ち寄ったりするのも好きです。最近お酒をあまり飲んでいないんですが、酒場も好きです。酒場ってみんなで楽しむ空間って感じがして。一人で行って、隣の人と仲良くなったりもします。」

パンを買いにくるだけでなく、美穂さんに会いにくるお客さんも後を絶たない

美穂さんに会って話をすると、元気が湧いてくる。美穂さんはエネルギーを燃やし続ける人であり、そのエネルギーも分けてくれるような人。ぜひ伊勢観光の際は外宮参道沿いにあるパン屋 麦へ、美穂さんに会いに行ってみては?

パン屋 麦

営業時間:木ー月曜 11:00~18:00(売り切れまで)

定休日:火曜と水曜+不定休

住所:三重県伊勢市本町13-6

HP:https://trio.theshop.jp/ 

 

書き手

柳生 かな

 
 
 
Michiya Higashiyama