ローカル食材研究家、ヒロキさん
背の高い店主が全国各地の地方食材を研究し、巧みに操る創作料理とパスタの料理店
“NOPPO local food laboratory”
我々FOLK FOLKもよく「自分たちへのご褒美」として通うお店だ。
今回は、NOPPO local food laboratory 店主の中世古 裕樹さん(以下:ヒロキさん)について、僕たちの知らない面を含めインタビューをした。
将来の仕事や進路について考えている学生にもぜひ読んでもらいたい。
中学卒業。社会人の始まり。
中学卒業後、土木の仕事についた店主のヒロキさん。
「高校には行く意味が見つからへんから行かへんだ。落ちたとかではなくて、行こうともしやんかった」
高校選びは人生で最初の分岐点だと思う人も多いかもしれない。中学生でとりあえずの保険をかけずに人生の選択ができていたヒロキさん。
土木の仕事を何年か続けた後は、知人の紹介で名古屋で働いていた。
「ある日名古屋の街を歩いている時、料理人募集の張り紙を見て、そのまま勢いで店に入ってたな。当然やけど、履歴書も何も持ってなかったし、料理の経験もなかった。だけど、ガッツとノリを評価してもらってその店で働かせてもらえることになった。」
その時はまだ21歳だったヒロキさん。ここから料理の世界に入っていった。
ちょうどほぼ同じタイミングで入社した同期ができたそう。その同期は学校も出ていて、しっかりとした面接に合格し入社した。負けず嫌いだったヒロキさんにとってはライバルのような存在。最初は2人同じ洗い場を任された。
「洗い場でライバルと差をつけることは難しい、だからシェフの目を盗んで仕上げのパセリを振る作業を盗みにいった。」
最初はすごく怒られたそう。なんといってもパセリは仕上げ、サッカーで言うとゴールシュートだ。
その作業をヒロキさんは怒られながらも何度も盗みに行っていたのだ。
しかし、怒られすぎると人間は臆病になってくる。そこから皿洗いだけに専念しようとすると、逆にパセリはまだかと怒られた。その次の日からサラダを担当することになった。
専門知識を既に持っていた同期を抜いた瞬間だった。
「与えられたことだけをしてたら作業。俺は料理の仕事をしたくて、そこのレストランに入った。だから自分でもできそうな簡単な料理の仕事は奪いに行った。」
中学卒業してからすぐに働き始めていたヒロキさん、専門学校を卒業してすぐの同期、二十歳前後の2人の間では仕事に対する考え方が大きく違ったのかもしれない。
与えられた作業だけをしていたら、仕事の時間は苦痛が多くなるのかもしれない。奪いにいくほどやりたい仕事があれば、きっとどんなに怒られても幸せだと思える時間は長いかもしれない。
世の中にはまだ学歴社会で、「中卒」というだけでレッテルを貼る人はたくさんいる。
しかし、実際に仕事をする場面で学歴が必要だという場面はあるだろうか。
ヒロキさんがまだ中学生だった頃、本当に何がいるか、何がいらないかの選択ができていた。
僕はそんな考えを尊敬している。
ずっとやりたかったイタリア料理。初めての挫折。
「13年間様々なジャンルの料理店で働いてきた。フレンチ、大衆居酒屋、ファミレス、イタリアン。」
本当はパスタが作りたくて料理の世界に入った。
しかし、イタリアンの世界に入ったのは料理人生の最後だった。
本当にやりたい仕事ができると意気揚々としていたが、ここで初めての挫折を経験する。
料理店ならではの厳しい職場環境があり洗礼を受けた。
キッチンではシェフと2人きり。
「料理の指示は全てイタリア語。シェフはせっかちで、できないことがあればむかつかれる。そして、できないことをできないと言えば怒られる。なんとかできないことを無くそうと、もがき足掻いとったな」
なかなか自分でも成長が感じられなく怒られる日々が続き、シェフ恐怖症になってしまう。
そんな生活から逃げるように、そのレストランを辞め、伊勢に帰ってきた。
「そこが一番人生で落ちたポイントやな、料理以前に人間が怖くて帰ってきてしまった。そこがすごく恥ずかしかった」
しかしもう料理への気持ちが折れることはなかった。逆に落ちるところまで落ちたからやるしかないということだった。
自分は誰かと働くことはできないと開き直り、伊勢で雇われ店長としてお店を任せてもらえることになった。
できないことはできないと自分で認めることが重要だと思う。
日本の大きな会社では総合職として色々な部署を異動する文化が根強く残っている。
そのメリットもあるのかもしれないが、できないことをできるようになるまでかけている時間はもったいない。人生は有限だ。
13年の縁が繋がり、NOPPOが生まれた。
小さい頃から、いつかは自分のお店を持ちたいという夢を密かに持ち続けていた。一度は薄れかけたかもしれないが、運命は着実に夢に近づけていてくれた。
「NOPPOがあるこの場所は、13年前に僕が働いていたレストランの2号店だった場所。そのお店がなくなる時、厨房の備品も含めそのまま安く譲ってもらった。」
しかし、その昔働いていたお店はいい辞め方をしていないそう。
他にもその場所でお店をしたい人は居たそうだが、店を借りれたのは13年前一緒に働いていたヒロキさんだった。
仕事での繋がり。それは仕事だけの関係なのかもしれない。しかし人との縁は一生もの。どこでまたその縁に巡り合うかはわからない。
13年前、今NOPPOがある場所のお店が初めて、お店前の通りに灯を灯した。今みたいに外灯がちゃんとあるわけではなく、道路も綺麗ではなかったそうだ。
最初の灯を灯した場所で、NOPPOは美味しい料理と賑わいを創り出している。
こうやって、人も場所も後世に繋がっていく。
FOLK FOLKからNOPPOまでは自転車で約10分。徒歩約20分。
NOPPO local food laboratory
営業時間:火ー木曜日 17時~23時(Lo.22時)
金曜、土曜 17時~25時(Lo.24時)
日曜日 13時~22時(Lo.21時)
定休日:月曜日、不定休月1.2回あり
住所: 〒516-0072
三重県伊勢市宮後1-7-36
座席数:12 席
書き手・写真
ヤギュウ ショウ