サイ好き店主のこだわりパンが並ぶ「サイとパン」

伊勢神宮の外宮と内宮を結ぶ道であり、神様が通る道とも言われる御幸道路。そんな御幸道路の中間地点にある、サイのイラストが目印のパン屋さん、「サイとパン」。

40から50種類ものパンが並ぶ店内はパン好きには幸せそのもの。今回は店主の菅原さんにお話を伺いました。担当は柳生かなです。

2022年9月にオープンした、「サイとパン」。きっと多くの人は、「なぜサイ?」と思うだろう。そこはシンプルに、「店主はサイが好き。」というもの。

「サイとパンという名前は、『パンとエスプレッソと』で働いていたのでそのエッセンスを入れたかった。サイについては、サイが好きなんです。群れを作らないという習性もなんだか好きで。」

ハニカムような笑顔で答えてくれる菅原さん。

店内を見渡すと所々にサイモチーフのアイテムが

探すのも楽しい

陳列棚には魅力的なパンたちがずらり。定番から季節限定の変わり種パンも。

定番パンの中でも、カンプーニュはサイとパンのシグネチャーブレッド。

カンプーニュはサイとパン独自の製法で小麦に対して[※]110%以上の吸水量で仕込んだモチモチを超えたプニュプニュ食感のカンパーニュ。トーストすると皮がパリっとして中の食感とのコントラストがはっきりし、さらに美味しい。

※[補足]カンプーニュに使う全粒粉は、季節によって産地や品種が異なるものを新しくブレンドし、レシピを常に変えている菅原さん。国産の小麦は美味しいものがたくさんあるので、いろんな味を知って欲しい気持ちと、ご自身もたくさんいろんな小麦を食べたいという思いから。プライスカードにはその都度使用している小麦粉の記載もあり。ぜひチェックしてみてください。

湯種食パンやクロワッサンも外せないサイとパンの定番パン


季節限定の変わり種パンもたくさん。夏は限定パンのローテーションが早く、お店に足を運ぶたび、並んだパンを眺めるのが楽しい。

「夏は面白い野菜が多く、色んな組み合わせのパンに挑戦しやすい。果物や野菜は旬の時期が短いので、旬のものは旬な時に出せるようにパンの試作から販売までスピード感を大切にしている。なので短期間販売のパンもちらほら。二日間だけの販売のパンもありました。」

空芯菜やゴーヤを使ったエピも ※取材は2024年8月

これまでに挑戦的だったなというパンも聞いてみました。

「ミントとサマーフルーツのパンは僕の中でもかなり挑戦的。高加水の生地にミントを混ぜて発酵させることによって、生地にしっかりとミントの香りがうつる。夏のドライフルーツとナッツを生地と同等の量を練り込み焼き上げる。風味も食感も楽しいパンになりました。」

モチモチのミント香る「ミントとサマーフルーツのパン」


パン屋さんではあまり見かけない食材たちの組み合わせ。変わったアイデアはどこから来るのでしょうか。

「ミントのパンはイギリスのイタリアンレストランで食べたミントとピスタチオのパスタからインスピレーションを受けました。ヨーロッパの食文化は日本のそれとかなり違っていて、食材の組み合わせも面白い。もともとあるパンからというより、レストランの食材の組み合わせから刺激を受けることが多いです。」

厨房で取材をする様子


「食べた時にはっとさせられるような、面白さや驚きを感じられるような食べ方を提案し続けていきたい。それが飲食店の務めだとも思っています。」

食材の組み合わせで楽しませてくれるのはもちろん、材料にもこだわりが。

「地産地消はずっと意識している。三重県産のものをメインに仕入れ、農家さんとの繋がりも大切にしていきたい。価格が高くても、仕入れ数が限られていても、地のもの、旬なものを使っています。」

「特に、今使っている全粒粉は三重県南伊勢町にあるmellowという農家さんのニシノカオリ全粒粉。mellowを運営している島田さんは、南伊勢の耕作放棄地をもう一度実り多い地にしたいという想いから、自身で耕作地を整備して、栽培から収穫、製粉まで一貫して一人で行っています。低農薬で丁寧に作られ、『みえの安心食材』の認定を受けている島田さんの全粒粉は味が濃く、焼き上がりがナッツのような香ばしさがあり、かつ後味に程よい甘さも出る。挽きが荒めなので小麦の味も強く味わえます。」

菅原さんからいただいたmellowさんの写真

食パンとブリオッシュ以外のすべての生地にmellowのニシノカオリ全粒粉を使用。ニシノカオリの香ばしさを強く感じられるのはカンプーニュ、バゲット、クロワッサンの三つ。

「パン屋は二次産業。一次産業の農家さんがいないと成り立たない。なので農家さんに恩返しができるようなアクションをしていきたいなと思っています。小麦を作っているエリアは限られているので、東京にいた頃は農家さんとの繋がりを持つのも難しかった。伊勢に引っ越してきてから恩返しがしたいという気持ちが強くなりました。」

黄金色の麦が美しい


サイとパンがオープンして約2年、伊勢に移り住んで約3年の菅原さん。伊勢の暮らしについても聞いてみました。

「伊勢は住みやすいと感じています。生活も不便に思わないし、人も多くないので東京にいた時のようなストレスもなく生活しています。」

菅原さんの通勤経路にある大きな鳥居。通る度ワクワクするそう。

「あと伊勢のパン屋さんは良い人ばかりだなって。業者さんも何も分からないまま伊勢に来たのに色々と教えてくれました。伊勢の人たちは、一緒に何かしよう!街をよくしよう!というようなマインドが感じられる。東京はもっと個のイメージで、良い店作るぞ!という気持ちの方が強く感じたかな。」

「伊勢の人たちは伊勢神宮があるからかな、無意識的に誇りがありそう。伊勢は田舎だよって言いながらも潜在的な余裕が感じられる。だから優しいのかな、僕みたいな土地を知らない人間でもウェルカムで、いっぱいサポートをしてくれました。」

地元の人にも観光客にも愛されている

二組ずつの案内のため外で待っているお客さん

「お客さんもローカルなお店を大切にしようという気持ちを持つ人が多そう。先日来てくれたおじいちゃんからも、『頑張ってね!』と声をかけてくれました。」

「関東ではお店の入れ替わりが激しく、通勤経路にあったお店も開店しては無くなってと回転が早かった。どんなお店があったっけ?と、お店の事も思い出せない。それってお店が街の中で機能していないって事だと思うから、自分でお店するなら街に根ざしたいと思っていた。今後は街のためにも何かしていきたいですね。」

人柄が滲み出る菅原さんの笑顔、好きです


菅原さんの想いがこもったパンたちは今や伊勢名物。

伊勢の街のパン屋さんとして、今後の展開も楽しみです。

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サイとパン

営業時間:10:00~16:00 (売り切れ次第終了)

定休日 : 火曜・水曜 +臨時休業あり

住所:伊勢市楠部町203-16

Instagram:https://www.instagram.com/rhinoandthebread/

Michiya Higashiyama