フローリスト ゆっこさんの働く1日

 

こんにちは。ヤギュウ ショウです。



皆さんは、お花屋さんの仕事ってどんなものか知っていますか?

お花を扱う、優しい仕事。
ざっくりとそんな印象を持っている方は多いはず。



そんな仕事をされているのは、entto & grimのフローリスト 岩井田 夕起子さん。みんなからは「ゆっこさん」と呼ばれている。

「お疲れさん!」といつも元気な声と明るい表情で、FOLK FOLKの結婚式の装飾でお世話になっている。



今回は、お花屋さんの仕事に仕入れからお邪魔させてもらった。


【entto&grimの記事】





2:00AM




名古屋の市場に仕入れに向かうため、朝はものすごく早い。
(伊勢から名古屋まで車で2時間弱)


ショウ:「おはようございます。今日はよろしくお願いします!こんなに朝早いんですね。」

ゆっこさん:「おはよー。めっちゃ朝早いでしょ。というかまだ夜だね笑」


ショウ:「仕入れはどのくらいの頻度で行くんですか?」


ゆっこさん:「週2回くらいかな。旦那と交代で。だからこの時間に1人で運転で、眠気も来るから、あっちゃんのYouTube大学とか聞いてるかな。」


entto & grimはゆっこさんご夫妻が始められたお花屋さんで、お二人には3人の育ち盛りのお子さんがいる。仕入れがある時は、どちらかが家担当で、どちらかが仕入れ担当になるようだ。


ショウ:「近くには市場はないんですか?」


ゆっこさん:「県内にもあるけどね、やっぱり品揃えを考えると名古屋まで行かないとね。」


ショウ:「じゃあこのあたりのお花屋さんはみんな名古屋まで行くんですか?」

ゆっこさん:「名古屋まで行くのはかなりの少数派だよ、最近はオンラインでも発注できるしね。実際に行かないとお花の色とか状態が見れないし、あとは見て、あれも、これも全部くださいってできるじゃん笑」


週に2回ほど名古屋の市場へ仕入れに足を伸すそう。


気がつけば、高速を下り、大須観音すぐ近くの中京花卉(ちゅうきょうかき)園芸農業協同組合に到着しました。

時間はまだ3時50分。この日の市場の開場は、4時からとのこと。







広い体育館程度の大きさのこの市場は、全国でも珍しい相対市場となっており、仲卸業者からだけでなく、お花屋さんが生産者から直接買い付けることもできる。

お花屋さんは生産者からお花の情報を得られる機会でもあり、生産者は世間の需要や流れを知る機会になっている。また時には座り込んで、世間話をすることもある。






仲卸の方と仲良く話している。(午前4時からみんなテンション高め)

農家の方たちと座り込んで話をする様子


市場ってみんな忙しそうで怖そうなイメージがあったが、ここの市場はみんな温かい。

素早くお花を選びつつも、次々に仲卸の方や市場に来ているお花屋さんと話している。


ショウ:「何を見て選んでるんですか?」



ゆっこさん:「可愛いもの!」「もちろんお花の状態も見るけど、基本的にお店に並べるお花は、自分が可愛いと思ったもの。だから旦那が仕入れに行く時とお店の色はガラッと変わるよ。」



「仕入れはたくさん可愛いお花を買えるじゃん!だから楽しいよね!だけど、気がついたら同じようなお花をたくさん買ってしまうことがあるから気をつけないとね。」






お金以上に信頼関係で成り立っている。



「ウェディングの装飾とかだと、なかなか手に入れづらい珍しい花を仕入れることも必要になってくるから、卸の人たちに準備してもらうには信頼関係が大切だよね。」



仲卸の方から大量にあるお花を買って欲しいと頼まれることがある。なるべく応えて、自分の頼みも聞いてもらえるような関係を築いているそう。


伊勢への帰り道、仲卸の方から一本の電話が鳴った。

どうやら購入前の仕入れたお花を市場に忘れてきたようで、

仲卸の方がお金を立て替えて、次回の仕入れまでお花を保管してくれることになった。

これも信頼関係があるからこその出来事だ。





お花を買うことが大好きだった少女。




ゆっこさんは、愛知県名古屋市に生まれ育った。

小学生の頃は、1人自転車でお花屋さんへ行き、お花を買うことが好きだった。




「たくさんのお花の中から選んで買うのが好きだったんだよね。だから買って帰ってお世話するのはお母さんだったね笑」




お父さんもお祝い事や記念日ごとにお花を買ってくるような方で、家族揃ってお花が好きな一家だったそうだ。




大学生になり、名古屋のお花屋さんでバイトを卒業ギリギリまで続けたそう。

「そのままそこのお花屋さんに就職すればいいかと思って、就活せずにいたけど、卒業直前に直属の先輩が辞めちゃって。大好きだった先輩だからもう働けない…となって、私も辞めた。笑」



大学卒業後から就活を始め、結婚式場の装飾部門の立ち上げメンバーとして中途採用されたそう。




その後はフリーランスになりブライダルの仕事を受け、

そして結婚をきっかけに伊勢でentto & grimをオープンした。





まちのお花屋さんができること



まちのお花屋さんは、お花の知識がない人にでも売ることができる唯一の場所。

だからこそ、ゆっこさんは「お花をあげるのは気持ちをあげること」と言っている。

誰かを想い、選ぶお花には知識なんて必要ない。きっと、受け取った時の相手の気持ちや表情を考えることが必要なんだろう。

それは自分へのお花でもだ。例えば玄関に飾るためのお花を選ぶとき。飾った後にきっと胸が躍っているだろう。





この先行きの見えない社会、お花も私たち消費者にまで届かずに廃棄されることがある。

だからこそ、まちのお花屋さんは、自分たちの創造力を最大限活かして、私たちにお花を届けてくれている。

私たちが誰かへの「気持ち」を、今日も不自由なくあげることができる。





お花は気持ちを具現化させた生き物。

お花の世界は、優しさと共に強い信頼関係で成り立っている。








8:00am


我々は仕入れを終え、名古屋から伊勢に帰ってきた。

帰ってくると旦那さんがお花を作っていた。





お花屋さんの仕事は、お花を選んだり、花束を作ったりと華やかな仕事とイメージが強かった。しかし、仕入れから見させてもらうと、長時間の体力仕事の場面がすごく多い。そして、それ以上に大きな信頼関係、お花に関わる人の心の温かさを感じられた。





「大変な仕事だけど、辞めたいと思ったことはないんだよね。自分にはこれしかできないからと思っているから。嫌なことも寝てすぐに忘れる!だからストレスないんだよね」





ここからゆっこさんは閉店時間の午後7時までお店に立つそうだ。





今回ゆっこさんを取材させていただいて、「好き」「かわいい」などのポジティブな言葉をたくさん耳にした。しかし、ゆっこさんは自分のことを「ポジティブな人間」とは思っていないそう。





「いい仕事ができた!と思っても、周りの人の仕事を見たら尊敬することばかり。だから常に向上心を持ってるかな!」





「仕事で失敗することは今でもたまにある。クヨクヨしてても意味がないから、ちゃんと対策を考えて、気持ちを軽くすることは心がけているかな。」





ゆっこさんにとって、花屋の仕事に好きや嫌いの感情はないそう。それはもうずっと続けている仕事だから、やることとして捉えられているんだろう。


小学生の頃、1人自転車で花を買いに行くことが好きだったゆっこさん。そして今もずっとお花に携わっている。
この時間の長さに花へのLOVEが表されているのだと思う。



entto & grim

営業時間:水ー月曜 9:30~19:00

定休日:火曜

住所:三重県伊勢市黒瀬町 1256-3

HP:http://www.entto.net/

Instagram:https://www.instagram.com/entto_flower/?hl=ja


書き手・撮影

 
 





 
Michiya Higashiyama